武術とは何か、カンフーとは何か?

”陳情令”
武術と言っても、それはあまりに歴史が長く、世界に多くの流派があり、その一つ一つが奥深いですし人によっても見方考え方は違います。正解というものはなく、それぞれの武術ポリシー、哲学があるのだと思います。ということは、初心者のあなたでも、武術に自分なりの意味・意義・テーマを込めていいということです。今回は中国武術にテーマをしぼり、カンフーとはなにか、私の経験を踏まえた私なりの私見をご紹介します。
私のメインに行っている武術は中国武術、カンフーです。
現在では、より視野が広がって世界の武術に目を向けるようになりました。
①アフリカンダンス&マーシャルアーツ
②インドのカヤリパヤット&インド武術
③韓国の古武術(諸派)
➃武当山の武当派武術
主に重点を置いているのはこの4つです。
随分インターナショナル
でもより多くの武術や舞踊を学びたい知りたいと思っています。そう思うようになったのも、もとは武当派の多様性、柔軟性があるからでした。
中国武術とは最強の健康法+総合藝術
一時はあまりにも好きすぎて武術三昧の日々でした。金庸の小説ドラマに出会い感化されて、 武当山にある正式な継承者の武術学院の門弟となり、国際武術アンバサダーも5年間務めました。
ちょうどその頃国連 3人のアーティストプロジェクトをがありましたので パフォーミングアーツをする人達に武術の知識を教える機会もありました。それが武術を芸術ととらえ、武術コレオグラフィー、マーシャルアーツコレオグラフィーをやり始めたきっかけです。 マーシャルアーツコレオグラフィーについてはまた別の記事に譲るとしてまず、カンフーとは何でしょうか?
これは武当派の考えも大いに入っていますが、武術とは最強の健康法でありまた、総合藝術です。
武当派にとって武術は、単に戦って強いかどうか、少年ジャンプでえんえんと連載しそうなマッチョな闘いの世界ではありません。もちろん格闘技として、護身術として、戦闘の道具として武術を学ぶわけですが、それだけではありません。
今の中国武術に関していえば、その一番の目的は健康増進でしょう。
それは中国武術、カンフーが「運動」だからではありません。
もちろん身体を動かすことは健康につながります。
でもより深い理由があるのです。一般にカンフーとは、旧石器時代から進化してきた武術で、強くある為戦うために続けられてきたのですが、それはやがて中医学的な考えかたと融合します。
インドを中心とした、東洋医学的な考えとも融合します。すべての動きに、各身体部分(見えない経路経絡経穴などもふくめて)との繋がりがあり、どこに作用するかが決まっていたり、全体の気血津液の流れを良くし、リフレッシュさせるという意味もあり、漢方薬的な意味を持ち、また漢方薬的に必要なカンフーの動きを選択していくこともできます。
よって、単純に身体を動かすことで健康につながるよねというだけではなく、心身そして見えない部分である意識・エネルギー身体・氣、というものを新しくし、強化していく。ここが、他にはないカンフーの凄みであり、魅力的な特徴です。
もっと言えば、私達がカンフーをするとき、動かしているのは身体だけではなく、エネルギーであり、心であり、意識であり、無意識であり、魂です。そういう意味では、芸術的なものでもあり、実際にカンフーをすると、あなたのクリエイティブな能力や直感や感性は研ぎ澄まされていきます。また同時に、氣を扱うために、あなたのスピリチュアルレベルの身体も健康になり、氣感つまりスピリチュアルレベルの見えざるエネルギーも、感じやすく、受け止めやすく、扱いやすくなっていくのです。
こうして健康になる・健康を維持する・より健康になる、ということをこの武術は本気で目指しています。それは、イコール「あらゆる意味で全方向から強くなる」、ということでもあり、心身すべてが強壮になることを目指せます。
またそれはイコール美しくなる、ということでもあり、美容や若さ、身体能力の向上、心身のしなやかさや清々しい心身を持つということでもあります。
そう、中国武術はまず健康・強壮を目的とし、美しく元気で若い心身をつくっていくことを目指しています。そこでは、他人を倒すとか、他人より強いとか、大会での勝敗とかは関係ありません。
少なくとも武当派の特徴としてあまり人と露骨に意味もなく闘って勝負することには、関心もないし重きをおいていません。大事なのは自分です、だから武術・カンフーイコール究極の自分磨きだといえます。
気功も太極拳も武術

多くの人特に女性や、カンフーアクションゲームやアニメや映画を好んで来た人たちは、武術とは好戦的な人がする格闘技というイメージがあるようですが、それも一部ではあるものの、実際には気功も太極拳も武術の一部です。ただこれは武術サイドから見た考え方で、気功家にすれば「武術は気功の一部」、太極拳の先生からすれば「武術も気功も結局太極拳に行き着く」という人もいますので、それぞれの見方から違います。
ただ一つ言えるのは、究極をいえば、
武術・気功・太極拳・養生法はすべて同じであり、一つのものだということです。これらは確実に混じり合っています。融合しています。ただそれを区別するのは、やっている人がどのカラー、どの特徴が強いものに取り組んでいるかというだけです。
ですから武当派では、まず瞑想をして内力(いわば心身内部のエネルギー)を高めます。武当派にとって、静功ともいえる瞑想は非常に重要な修練方法です。
また武当派では多くの気功の套路があります。もちろん武当式太極拳もあります。太極拳は拳法ですから、これも一つの武術です。太極拳がカンフーの一部であることはあまり知られていませんが、武術を少しでもしたことがある人にとっては当たり前のことです。
もう一度言います、カンフーとは?
武術であり舞踊であり気功であり太極拳であり格闘技でありダンスでありアートであり癒やしのボディワークであり運動であり瞑想であり、総合藝術としてあなたの魂の藝術と創造なのです!
武術から教養まで〜人生全てに役立つ武術が武当派

”陳情令”
武当派の場合、よってどれが武術、という明確な線引きはありません。瞑想・気功・導引法・太極拳・そして皆さんがおなじみのいわゆるカンフーが渾然一体となっているのです。それ以外にも武当派には、太乙や玄武、ドラゴンムーブメント、独自の八極拳、フチェンなど独特のスタイルやルーティンも組み込まれています。非常にレパートリーが多い武術流派なのです。また中華圏の文化そのものである道教武術と言われ、その究極の始祖を老子としています。なのでその修業法には、格闘技的なものだけではなく、自然にあるがままにという老子の哲学を土台とし、神秘的なほどの仙術的な修練もあります。だからこそ多くのドラマで武当式のスタイルの武術は採用されていますし、金庸の小説からアカデミー賞をとったグリーン・ディスティニーまで、武当派は物語にも伝説にもなっている、中国の貴重な伝統文化といえるでしょう。実際に武当派は中国3大公式武術の一つです。
またそれ以外にも、武当派では多くのことを学びます。そしてそれらすべてが人生、また武術と考えます。例えば武当派に入門してまずやることといえば、書道です。ひたすらに朝から夕方まで書道・・・
私達日本人にとって書道も漢字も慣れたものですから、やるのに負担はありません。でも多くの西洋の外国人にとって、書道とはまったくわけのわからない神秘の世界のようです。また墨をすることからして彼らには難しいことです。
なぜこんなに書道を重んじるのか?それは書道も気功と考えるからです。また修練した文字は神聖な文字であり、波動を持った言霊と考えます。
武当流では、その他に最も大事なものとして音楽があります。これもひたすらに朝晩問わず練習しています。使う楽器は琴と笙か笛です。これは、陳情令での大きなアイコンとして使われていましたので、陳情令ファンにとってはたまらない世界でしょう。実際の武当山の音楽は、ドラマの大衆的な部分はなく、より洗練され、より波動的なもので、聴いていると深い癒やしが起こります、本当の音律術として機能しています。

その他にも、以前も武当について書いたように、漢方・薬膳・易経・読経・古典読書・老荘読書・詩作・水墨画・ボーカル・礼儀所作・茶道・囲碁将棋なども、武当派では武術の修練の一つ、内功の一つと考え、楽しく練習しています。師匠や大師兄などは厳しい修行のため山に面壁修行に行ってしまいますが、基本今の時代は行う人が楽しく、中国古代伝統文化は凄い、面白い!と思えるように工夫されています。でも、やはり一定のレベルになりたい人はそれなりの練習や特訓がありますし、流派を継ぐ人の練習方法、初心者向の簡単な基礎を楽しむ練習、俳優さんたちが学ぶ動作練習など、様々に練習内容は構成されています。
武術は一人一流派ではないのか?色々な流派をやっていいのか?

”月上重火”
これは日本人と中国人の間で最も考えの違うところだと思います。日本人は真面目すぎて、ある意味堅物なので、何に関しても一つの流派だけをひたすらやらなければならない、と思いこんでいる人が多いです。特に優秀で高名、と言われる先生方に限ってそういう傾向があります。
武術は、中国武術は一つの流派だけをやるんだ、一人の師匠だけにつくんだ、と頑なにそれを主張し、しまいには怒って威張って文句を言うような人たち。。。
転じてそのルーツである中国人の先生やインドの先生は、一人につき一流派だ!ときつく縛る人は見たことがありません。むしろ、中国の師匠やその門下生達は、心から自分の流派を愛して没頭しているから確かにその流派の練習が断然多いものの、決して他の流派を否定しないしやるなともやらないともいいません。そんな話聞いたことがない・・・
むしろ、多数の流派ができて当然という感じです。他の流派で習ったと報告したって、他の学院でも練習してますといったって、「そうなの」で終わり。またよく言う少林派との確執なんか別にないです・・・互いに学び合い、話し合い、行き来して習い合ってますけど・・・
だから、一人一流派、一人一師匠なんて、てんで頭の硬い、世界の狭い話です。そんなのは信じるのはやめましょう。下手したらそれはあなたのことをずっと自分の教室に通わせたい口実かもしれません。というかたいていはそんなものです。ただ複数流派を学ぶ際には、気をつける点がありますのでそれは後ほど記事に書きます。
それでも一派しかやるなといわれたら、どうしてだめなのか身体で説明してみろ!、って言ってやってください。そんな偏屈な考えが日本でもっともらしくまかり通っていることが、悲しいです。結果として、中国武術の本当の幅広さを知らない武術家が多くなってる。ずっと同じお教室で同じことしているだけ。。。日本の武術家武道家ってものすごく視野が狭いし、世間しらずになってる・・・正直、ならうなら中国人の師匠についたほうがいいです。そのほうがずっと鷹揚に世界を見られる武術家になれるでしょう。
ブレイクダンスも中国武術
中国という大国は、文字通り雄大なまでに大きな国で、多くの文化が長い歴史の中で積みに積まれてきました。グランドマスターは、そんなところでいちいち、どこそこの流派の技をしたから間違いをおかす、とか身体の動きがおかしくなるなどいいません。
ちゃんとしたマスター達は、多数の流派をやっても、整理整頓がちゃんとできます。軸はぶれません。また中国人気質として雄大な国土と同じく、気持ちも大きい人が多いです。お金に関することには細かいが・・・でも大体、本当に柔軟なので、驚くほど柔軟なので、流派がどうのこうのなんてみみっちいことは言いません。
最近では流派を超えて、中国武術を見せる演舞を世界公演することも増えています。また他の分野と混じり合うことも増えてきました。その象徴が新種競技の登場です。ブレイキン、トリッキング、パルクール、フリースタイル系のボード競技などは、ももとを辿れば武術に行き着きます。それを言うと、ヒップホップはアメリカで生まれたんだ中国の変なものと一緒にするなとうるさく怒鳴られたことがありましたが、これもまたダンスや舞踊、武闘の歴史を学んでいなさすぎる・・・分野は歴史的に入り混じってここまで来たのです。こうしたこともまた、ダンスにあまりにもプライドが固執している証拠で、かつ知識のないものが言うことです。
特にブレイクダンスというのは武当派の技ににたところがとても多いです。なのでとくにアクロバティック系の達人を目指しスタントなどを目指す人は、「ブレイクダンスを3年ほど習ったらどうか」と師匠に言われる人もいます。それほど、実際の中国武術の達人たちは幅が広いです。日本で武道家が、ヒップホップやったらなんて言わないでしょう。凝り固まっている人たちは、ヒップホップ系など誰も考えもつかないでしょう。でも、すべては繋がっているのですよ。武術の世界のすべては、歴史的に見てもすべては繋がっている、そうやって進化してきたのです。
武当派が少林寺に行き、ハリウッドでアクション武術を学び・・
私も、武当派の生徒になりながら、同時に少林寺の師匠のクラスを受けてきたし、また日本では陳式太極拳、楊式太極拳も習い続けてきました。
またその先生が偶然、アクション映画俳優でスタント養成もできるひとだったので、彼はそれこそあらゆる流派のあらゆる武術ができます。武器術やアクロバティックムーブメントも得意です。そこで運命的ですが、武術動作のコレオグラフィーを習うことになりました。
またそれに加え、これまた人間性が素晴らしいために生徒になったある師匠は、ジェット・リーと同期だったので、アメリカで彼と同じ師匠の訓練を受けると、俳優の道を行ったジェット・リーとは違い、おとなしいが教えることが大好きな私の師匠は、ロサンゼルスでこれまた武術動作指導家となり、俳優さんを教えつつも、多くの人にあらゆるスタイルのカンフーを教えています。
師匠は陳式の陳氏の家に生まれた正当継承者の一人ですが、世界の人に中国武術を教えたいという情熱がとても強い方で、とにかく多くの生徒のため、多くのスタイルを学ぶ人で、自分式の武術の考案もしています。でも陳式という軸からはブレないのです。それが本当グランドマスターなのですよ!
大事なのは、格闘家のような強さを身につけることではありません。練習は修練であり、癒やしであり、健康づくりであり、クリエイティブなアートです。それによって自分からいらないものを削ぎ落とし、また清らか・なめらか・柔軟な心身を実現することで健康になることが目標です。
武術・カンフーには、自分にあった練習構成やスタイルがある!

ただ先にも行ったように、元は武術ですから、それで格闘家になりたいという人はまさにカンフーという闘いの練習をすればいいし、道士になりたいという人は内功修練をすればいいし、先生になりたい人は太極拳主体に練習すればよいし、またアーティストとして武術を学んで視野や動作能力を上げたい人は芸術的な修練を軸にすればいいんです。
答えはありません。究極の目標は健康の実現ではありますが、何が究極の健康なのか、どれを重視すれば究極の健康が実現するのかは人によりますから、武術の持つ多様性を、自分の目標のために上手に構成して練習内容を組み、大いに武当派の多くの修練法や技や套路を活用すればいいと思います。
よって、武術とか武当派とか言われて、なんか難しそう、あんなアクション苦手、ジャッキー・チェンみたいなの?カンフーなんてできないよ〜と尻込みしないでください😁
武術も武当派も、膨大な、数にすることもできないほど多くの練習方法がありますし、それはあなたのレベルに応じてやれば充分なのです。
武当派はその中でも特に多様性と武術藝術としての美しさに魅力があります。
ですので、ぜひ女性にもやってほしいし、楽しんでほしい。
武当派をやると、不思議と他のムーブメントもうまくできるようになっていきます。
ダンスや新種競技、舞踊、格闘技、野球、サッカー、ヨガ、ベリーダンスなどなど、なんでもです。
それだけ、何にでも通用するスゴ技と技能とクリエイティビティを、武当派はしっかり持っているのです。
その奥深さと圧倒的な心身への効果を感じ取るでしょう。
そしてその面白さ、美、洗練された武術の威光に、感動するでしょう。
武当派は流れる清流であり、色とりどりの庭であり、ありのままの雲であり、大いなる自然であり、あなたを輝かせる虹なのです。この武術をすることで、想像以上のものを得ることができるでしょう。
初めの一歩に出よう!
下手な宣伝などではなく、盛っているのでもなく、中国武術に、カンフーに、世界の武術に、心底魅了された私が情熱を持って思うのです。「みんな、カンフーをぜひやってほしい!」と。
確かにプロフェッショナルな人たちが何らかのパフォーミングアーツに活かして強くなっていくためにカンフーコレオグラフィーなどをしていますが、私はみんなにやってほしいんです。
ちょっと前まで、中国武術といえば街でおばあちゃんがやっている太極拳とか、事実とは違うとんでも気功映像とかばかりでした。あるいは少年たちが憧れるカンフー映画しか、とっかかりはありませんでした。でも時代は代わり、中国伝統武術への固定イメージで、バカにしたようなものがほとんどだったのが、中国エンタメコンテンツほど洗練されたものはないレベルになってきています。
今は中国コンテンツへの視線は確実に昔とは違います。KPOPの子たちが、こぞってカンフーをやりたいやりたいと言ってくるのです。普段は中国文化に目もくれなかった若い世代の韓国人たちが、中国武術に憧れ必死に練習しているのを見ています。
そして日本でもいまや中国歴史ドラマでいっぱいです、キラキラな俳優さんたち美男美女が絶妙な武術動作を披露して見せる、そんな時代です。
政治的には微妙な関係でも、民衆の文化的には中国の文化は確実に今また、日本に入ってきています。中国武術がかっこいいと憧れるKPOPの子たち、陳情令に夢中になる日本の人々。。。文化的には交流が盛んになり、中国文化の奥深さが再考されつつあります。こんなことは、遣隋使の時代以来でしょう。陳情令の日本での長い大ブームでそれは確実なものとなりました。
カンフーへのヒントなら、今中国ドラマブームで、朝から晩まで放送していますから、ドラマの中にたくさんあります。あんなふうに格好良く強く逞しく、そして清々しく自然の中で自在に生きてみたいと思いませんか?ドラマでは多くの若い女性女子が、どこまでも強く美しくたくましく、武術を生き人生の生きています。実際、カンフーはそれを実現します。
私ほんとに、カンフーを愛しているんです。カンフーは私の魂なんです。
だってこんなにも凄いもの、こんなにも一つのもので多くのものを内包している優れた健康法は、世界に他にないと思いますから。
きっとカンフーというと映画のアクションイメージがどうしても強いでしょう。
でも、あなたのためのカンフーがそれぞれにあります。新しい冒険です。
本当に小さなことから、始まるんです。本当に基礎の基礎から、道が開けていくものなのです。
そこに、長い長い歴史がはぐくんだ雄大な詩があります。どうかあなただけの詩を書いてください、カンフーという悠久の神秘によって・・・
ぜひ、ためらうことなく初めの一歩からトライしてみてください!